ロックンローラー健在なり

 今夜は寿司を食べようと馴染みの店、「与平」へ出掛ける。 ローカルの客も多く利用しているのだが正月は観光客がカウンターに集中し 予約が取れないほどの賑わいで我々はこの時期をさけて食べに行く事が常である。 あいにく、オーナーの小原さんが病気療養中につき話し相手が無いまま時間が 経過してしまった。 しばらくして一人で来店していた隣の席の白人男性が話し掛けてきた。 ロスとホノルルを行ったり来りの生活だそうで、随分日本に興味があるみたいだ。 たわいの無い話ではあったが酒の影響もあり何となく声高な気分になってきた。 回りの客の事などとうに忘れて自分の世界に入り込んでしまっていた。

 トイレに立って店全体を見回した途端、目に入った人物に一瞬酔いが冷める程 驚いてしまった。なんとその人はあの偉大なロックンローラー、内田裕也氏 であった。何十年か振りにお会いしたのだがその存在感はやはり強烈であった。 アメリカにはキングオブ何々というフレイズがある。 例えばキングオブポップと言えばマイケルジャクソン、キングオブロックと言えば エリヴイヴェスプレスリー。 でも、私にとってはロックもポップも超越しているキングである。 恐る、恐る?挨拶にいき昔の話を切り出してみた。 以前はこちらから話し掛けれる事など出来ない重圧感が漂っていた事が フィードバックし、僕はもうデビュー当時の新人歌手に戻ってしまっていた。

 ご本人が「もう61だよ」と、おっしゃていたがなになに、とてもそんな雰囲気では なかった。目の輝き、男の臭い、お若い。やはり大物は違うのかな〜? 男の魅力とは何なんだろう? 何時までも夢を追い続ける少年の姿なんだろうか? さまざまな疑問が頭の中を駆け巡ったそんな一時であった。 お帰りになる時、「チェリッシュのコンサートが観たいなー、知らせてよ。」の 一言にただただ感激の晩であった。 ロックンローラー健在なり! 50を過ぎた僕に感激を与えてくれた裕也さん、ありがとう。 ウイスキーのプレゼントのお返しに次回は僕が日本酒をご用意致します。