11月1日

 9月から10月にかけてはハードなスケジュールが続いた。多少の疲労は感じていたものの、僕のツーリング計画は着々と進んで最終段階に入っていた。忙しい時こそストレス解消!自分勝手な言い訳をして出かける用意をしていた。ツーリングには最高な季節も理由の一つだったが、岡山県の金光町での仕事(金光町町制80周年の記念イベント、「SONG FOR KONKO」)が決定的なきっかけになった。ご承知の様に、僕のライフワークになりそうな?いや既になっている「ツーリング・松崎」への旅、その「松崎」が瀬戸大橋を渡ったお隣の県の香川県にも有るとの情報を知人から知らされていた事、さらに又、メールで四季折々、家族の事、色々な出来事を紹介してくれるチェリッシュファミリークラブ・広島支部長?のスマイルご夫妻から山口県防府市にも「松崎」があるとの情報も得ていた。(前出の支部は架空で僕が勝手に名付けてしまった)岡山へ行くなら少し足をのばして・・・、日本全国にそれ程に多くの「松崎」が存在するはずもないが、僕には心強い情報提供者がいる。でも今回は、駅でも地名でもなくて学校、「松崎小学校」を訪れる事にした。

 

 岡山公演後の10月27日、まずは香川県三豊郡詫間町松崎に存在する「松崎小学校」を目指した。しかし、想像していた学校とは多少イメージが違っていた。それと言うのも小高い丘に位置したその小学校は狭い農道?沿いにあるせいか、2つの校門の柱、刻まれた学校名、その奥に続く校庭や校舎は見つけることが出来なかった。仕方なく裏手の運動場へと向かった。体育の時間だったのか?校庭には数十名の児童が走りまわっている姿が目に入った。グランド隅には教師らしき男性もいた。僕はいろいろ質問してみようと声をかけた。しかし、革ジャンと皮パンにヘルメットにサングラスをかけた僕の姿は相当な不快感を与えてしまったようだった。「何の目的?」、「名前は?」「雑誌の人?」など、如何にも警戒心丸出しでの対応だった。無礼な対応に頭にきたものの、最近の児童への凶悪犯罪を考えれば致し方ないことだろう。そこで、私の名前は松崎、日本中の「松崎」と言う場所をHPに掲載していくつもり・・・、などなど理由話をしたのだが、それでもガードは固かった。致し方なく「私、怪しいものではないんですよ。チェリッシュと言う歌手をしてます松崎と言います」と名乗ってみた。しかし、この町で僕はまったくの無名らしく心を開いた話を聞くことが出来なかった。でも何とか?創設120年くらいたっている事と、校門のある方向だけを不機嫌そうに教えてくれた。何か拍子抜けでがっかりしてしまった。(香川支部を考えなくてはならないなあ〜)

詫間町・松崎小学校

 欲求不満気味でのスタートではあったが、松山道から「いよ小松IC」を過ぎて今治〜来島海峡〜伯方〜因島〜尾道へと続く「しまなみ街道」では、そんな憂鬱な気分は吹っ飛んでしまっていた。このルートは本当に綺麗で美しい景観のお勧めのルートだった。今日と明日の2日間は広島泊、予定の到着時間を過ぎてはいたが無事に広島へと到着した。

来島海峡

 明日は津和野から防府へ、それに、今回の最大の目的地である防府市松崎町にある「松崎小学校」が待っている。加えて金光町へも来てくれた広島支部長?スマイルご夫妻とのツーリングが実現する日である。この事はファンサイト管理人さん以来の大イベント!ワクワク気味であった。どんなご夫妻なのか?どんな道を走るのか?想像は膨らみ膨らみ〜、眠りについた。翌朝、9:30に中国道の戸河内IC近くの「道の駅」で待ち合わせを約束していた。バイクに興味がない方には関係ないことだが、高速道路ではタンデム(二人乗り)は禁止されている。従って、ご夫妻とのツーリングは一般道のみと制限された。最初は僕の先導で国道191号を益田市方面へ北上し、途中、休憩をとりながら津和野へとご主人の後を追走した。僕は不思議な気分になっていた。これで3人もの中年男性(失礼)をバイクの世界へと引きずり込んでしまった事だ。一人はファンサイト管理人さん、二人目は僕の主治医の勝見先生、三人目はスマイルさんのご主人である。(もっとも、彼は帰ってきたライダー!若い頃には相当に乗り込んだライダーで、皮のツナギを今でも大切に保管との事)いずれにせよ、何が僕と三人にそうさせているのか?いつも同じ価値観を共有したいと家族に言い続けてきた僕には気になってしょうがなかった。どんな種類のバイクでもどんなスタイルでもかまわない、何かに熱中する事で何かを見つけたいと思う気持ち、僕を含めた4人、きっと同じ価値観をもっているんだろう!前を走るBMW・R1100Sを追走しながらそんな事を考えていた。国道から農道、民家の軒先を抜け、通行止めの道を迂回しながら飽きることのないドライブを満喫していた。季節は正直なもの、うっすらと紅葉し始めた山々などが深まり行く秋を映していた。山口市に入って湯田温泉の国道沿いにある「三匹のカエル」という食堂で遅い昼食をとった。僕達3人は大盛りうどん二つと普通盛りを一つを注文しただけだったが、食堂のオバちゃんはせんべい、羊かん、コーヒーのサービスで歓迎してくれた。料金は1000円!何もかもがゆったりとして時間を忘れさせてくれた。いつしか僕のせっかちさは「なり」を潜めてその場に溶け込んでいた。

3匹のカエル

 防府市松崎町、遂に「松崎小学校」を目の前にする事になった。ホットした気分と達成感で一杯だった。香川県との比較はともかく、まさに歴史を感じる由緒ある学校!それが印象的だった。スマイルさんは先生とか児童とか保護者、誰にでも気軽に「こんにちは〜」と挨拶、そして、誰もが会釈を返していた。やっぱり、僕の格好とスタイルでは警戒心が生まれてもしょうがないと反省はしたが、もし、このスタイルと笑顔で「こんにちは〜」と言ったら、余計に不安を与えてしまうだろう。ともあれ、無事に目的地到着が出来たことに感謝だった。感動を胸に焼き付けながら遠くから、又、近くから学校の様子を眺めていた。

松崎小学校

小学校近くには有名な「防府天満宮」がある。正確には天満宮の近くに小学校があるのだが、僕はスマイル夫妻に案内されながら境内へと入っていった。もの知りスマイル女史はここでもその力量を発揮してガイド役になりきっていた。話題には事欠かないスマイル女史は凄い!反面、そんな彼女を優しく見守り言葉少なにサポートするご主人も凄い!

夫婦とは不思議な関係・・・、赤い絆の縁!夫唱婦随(婦唱夫随)!家族の愛の形は何通りも有る事を改めて感じさせてくれた。駐車場で2台のバイクを止めたままの立ち話、話題に尽きることはなかった。もうすぐ夕暮れ、別々のルートをたどり広島までの岐路につくことになった。一般道を走るBMW・R1100を信号待ちの後方から見送った。ほんのわずかな時間を共有しただけなのに別れとは寂しいもの、左右に分かれて走りだした僕の気持ちは何故か感傷的になっていた。高速道利用の僕は午後7時前にはホテルに到着していたが、スマイル一行は8時半をとうに過ぎていたという。一緒に一般道を走ればよかったと今でも後悔している。ツーリングと言えばたかが趣味、なんて思う人達もいる。でも、こだわりを持って友を大切に縁を貴重な宝物として考えている人間もいる。

さて、広島から名古屋までをいっきに走ろうとは考えていなかった僕は徳島での一泊を決めていた。そして、往路と同じ「しまなみ街道」を走り、松山道から徳島道を利用して徳島市内へ向かった。徳島はこの2ケ月で3度目の訪問だった。でも、プライベートな時間は格別なものでのんびり過ごす事が出来た。ホテルのスタッフも広島と同様に素晴らしかった。明日の名古屋までの岐路はどの道を走るのか未定だったが、川沿いに位置するホテルの部屋の窓からの風景に予定には入ってなかったフェリーでの和歌山入りを思いついた。10時15分発のフェリー、2時間の航海はツーリングの思い出を改めて蘇させてくれた。そして疲れも癒してくれた。5泊6日、今年3回目のロングツーリングの旅だった。こだわり続ける僕!皆さんは何と感じていることだろう?帰宅後の「11月1日」は僕の誕生日、また一つ年を重ねた。その日の僕は、今の気力と体力をいつまで維持して走り続けたい!と、願った日でもあった。