ラム
1月13日、僕たち二人はハワイでの休暇を終えて日本に戻った。空港への出迎えは息子、約束では娘も一緒のはずだったが家で待っていると前日の電話で話していた。多分、急な約束でも出来たのだろうと特に気に止める事はしなかった。空港を出て35分後、僕は玄関を入って「ただいま〜、帰ったぞ!」と、いつもの挨拶、柱越しに娘の「お帰り〜」の声がした。僕は妙な気がした。予感は大当たり!娘の両腕にタオルで包まれた子犬が目に入った。僕は娘に「どうしたんだ?この子犬?」と聞いてみた。娘は「一昨日、家にきた「ラム」ちゃん!」と答え「可愛いでしょう?」、僕たちは娘の「奇襲作戦」に呆れるばかりだった。
以前、BSマツチャンに「季節は春」と言う原稿を書いた。主役は黒ラブラドールの「ララ」と言う4歳の女の子だった。大型犬が春を感じながら昼寝をしている様子が可愛くてしょうがなく書いてみた。しかし、それから1年後の夏、「ララ」は熱中症から多機能臓器に異変が生じて突然に旅立ってしまった。生き物の死とは本当に悲しいものである。だから、しばらくは動物を家族の一員として受け入れる事を諦めていた。僕たちは仕事で出かけている時間が多いし、子供たちも外国生活、年老いた母にすべて任せることは難しかった。しかし、娘が帰国したこの時期、それが彼女にとっては絶好のチャンスだったのだろう。僕たちの帰国2日前を見計らったように生後一ヵ月半の「ミニチュアダックス」の「ラム」を見つけて家へ連れてきたのである。このところ子犬が欲しいとは言っていたが、そのたびに考え直すように話してきた。親(鬼)の居ぬ間に・・・、親の許可なく・・・、困ったものと感じていた。
娘は子供の頃のアトピーが今でも少し残っている。アレルギーが心配されるが、それ以上に動物好きには変わりはない。自分が多少苦しくても飼いたかったのだろう。僕たちは娘が「ラム」を自分自身の責任で育てる事を条件で何も言わない事にした。しかし、しかし!である、それからが信じられない光景を見ることになった。それはペットを飼う事に一番反対していた「エツチャン・ママ」の変貌振りである。あれこれ家事に追われながらも、その日からまるで孫?の面倒をみるように世話をしている。娘はチイ・ママでエツチャンはオオ・ママ、今までの大人だけの生活環境は一変した。静かだった母までも何か?明るくなった気がする。
「ラム」、名前の由来はアニメのキャラクターから名付けたらしい。でも、僕は「来夢」と言う言葉が頭に浮かんだ。夢が叶いますように・・・、いつまでも明るい夢が膨らむ様な家庭でありますように・・・、オテンバ娘の子犬のラム、しばらくは松崎家の主役の座を守り続けるのは間違いないだろう。