レコーディング  VOL1

 何かに追われているように、慌しく過ぎていったこの数ヶ月だった。その訳はアルバム制作が原因かもしれない。今年に入ってコマーシャル・ソングの吹き込みはあったものの、久々のレコーディングへのプレッシャーは、それなりの緊張感が生じるものである。
 当初は4枚のアルバムを12月から来年にかけての発売予定だったが、急遽、年内に全て発売へと変更になった。スケジュール的にもタイト、アレンジへの思いなど様々な状況が僕の頭の中をグルグルと駆け巡っていた。4枚のアルバムの総曲数は52〜3曲程になるだろ。12月発売となると、遅くとも10月末までに全曲レコーディングを完了しなければならない。勿論、通常の仕事プラスレコーディング、大変な事?になっているのが現状である。しかし、今回のアルバムのコンセプトが明確なのと、プロデューサー、ディレクターの音に対する感覚の素晴らしさが僕のモチベーションをより一層高めてくれた。
 さて、そのコンセプトとは?やはり「L.・O・V・E」である。1枚目のアルバム・タイトルは「L」、LIFE&LIVING、生きる事や生活、2枚目のアルバムの「O」はORDINARY、普通の、日常と言う意味、3枚目は「V」、VIEW、風景、考え方、そして最後の「E」とはEVERGREEN、いつまでも新鮮な、不朽、永遠という意味である。すべてのアルバムが一つになった時に「LOVE」、「愛」が生まれると言うストーリーである。1970代を振り返って、あの日、あの時、あの感動の名曲を僕達のオリジナル曲も含め制作が始まった。
 選曲に関してはプロデューサー&ディレクター、それに僕たち自身、その他にFM世田谷のリスナーの皆さんからのリクエストも参考にさせて頂いた。
 先日、VOL1の「L」の吹き込みが完了したばかりである。アレンジャーは僕には天才・奇才とも感じられる森下滋氏が担当してくれた。聴いてのお楽しみではあるが、これまでの僕たちの感覚からは想像できない作品が生まれた。ジャズやクラッシック的なサウンドをベースにした素敵なアルバムと自負している。

森下滋氏


 アレンジャーとは、まさに音の魔術師!どこから?そんな発想が生まれるのか不思議でならなかった。アレンジャーとシンガーの戦い、何とかドローに持ち込んだ気もするが、判定はファンの皆さんにお任せすることにしよう。でも、本当に楽しかった、又、本当に勉強になった。今の僕たち、年齢を重ねたオトナのサウンドが随所に感じられると思う。それは、これからの全てのアルバムにも反映されると確信している。
 アルバム「L・O・V・E」は4人のアレンジャーがそれぞれ担当するが、既にVOL2のアレンジも完成した。担当は「MOMO・KAN」、ベテランのトップギタープレーヤー、「ギター・デュオ」がベースになっている。9月のレコーディングを前に僕は、今、彼らが生み出すサウンドに対して、どの様に表現したらよいのか?作戦を考慮中である。
 前述したように、シンガーとアレンジャーは真剣勝負でレコーディングへ臨む。コンサートステージとは違った心の高揚は僕たちシンガーだけに与えられた貴重な時間なのかもしれない。因みに、チェリッシュのオリジナル曲は全アルバム中の12〜3曲になるだろう。まずは若草の髪飾り・恋の風車・哀愁のレインレインが収録されているが、原曲が一番と思っている方の奇声が聞こえてきそうな気がする。もっとも、それが僕たちが期待するアルバム制作なのかもしれないのだが・・・。